全部、私からだった。
「多恵の服にも俺の汗、染みそうだし」


「それ、私に『どけ』って言いたいの?」

振り返って見上げれば、またりっくんはいつもの困り顔。



「いや、そういうわけじゃねぇけど……」

私はテレビ画面に視線を戻し、

「エアコンの温度、もっと下げればいいじゃん。やだからね。絶対どかない」

と言い張った。


ちょっと、言い方が冷た過ぎたかな。

でもりっくんが悪いんだし。



「これでも全開なんだよ。このエアコン、ポンコツだからさぁ、クソッ」

りっくんは、苦々しく毒づく。


「ふうん。りっくんみたいだね」

何故だか無性に苛々してきて、思わず心にもない暴言を吐いてしまった。


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