全部、私からだった。
それにしても、私の対角線上に座っている人。


彼だけは、ガッツリワイルド系。

さっきから、食って飲んでばかりで、全く会話に入って来ない。



逆に気になるんですけど。

何しに来たんだ、お前? って。



見兼ねたのか、隣に座っている男性がその彼に声を掛けた。


「なあ、谷口ぃー。お前、なに食ってばっかいんだよ? 気に入った子とかいねぇの?」


言われた彼は、ゆるりと顔を上げる。


……が、

口一杯に含んだ食べ物を、咀嚼することに精一杯で答えられないみたい。



全部呑み込んで口の中が空になると、ようやく言葉を発した。


「いる」


短い、なんだソレ?


でも、初めて声聞いた。


外見に負けないくらい、低くて野太くて男らしい声だ。

いや、褒めているわけではないよ。


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