全部、私からだった。
思わず勢いよく抱きついた。

もうそれは、抱きつくというよりは、まるでアメフトのタックルで。


逞しいりっくんでさえ、後ろによろめいてしまうほどの衝撃に、りっくんが玄関のドアに背中をぶつけて、大きな音を立てた。



「どこ行ってたの?」

りっくんの胸に顔を埋めたまま問えば、

「いや、ちょっと走りに。寝てる多恵、起こしそうだったから」

と答える。



「起こしてくれれば良かったのに。探したんだから」

膨れて見上げると、りっくんは照れ臭そうに笑った。


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