全部、私からだった。
「え? わたしぃ?」


思わず大声を張り上げてしまった。



どういうこと?


だってこの人、一切私の方なんか見ていなかったじゃない。

食べてばっかりで。



「多恵ちゃんかぁ。だったら、こんな離れたとこで食いからかしてちゃ駄目だろーが」

隣の男性はからかうように言って、ワイルドな彼――谷口くんを肘で小突いた。



「駄目じゃねぇよ。お前、バカじゃねぇの? あんな可愛い子が俺なんか相手にする訳ねぇし」

谷口くんはそう言って、ジョッキのビールを豪快に飲み干した。


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