お前に全て、奪われた。 Ⅰ
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いつもの様に、古びた廃ビルの屋上から高層ビルのが立ち並ぶ広大な景色を一望する。
何も面白味の無いこの街で俺が一番好きな場所であり、俺が一番居心地が良いと感じる場所。
その日はいつもと何ら変わらない、少し生暖かな風の吹く日曜日。
ガタッ
背後から、人工的な物音が耳に入る。
「……誰だ?」
別に後をつけられる事は、珍しい事では無い。
…ただ、
今回の背後の気配は何時もとは違う。
憎悪、羨望そういった感情は一切感じられなかった。
後ろを振り向いても誰の姿も見えない。
きっと物陰にでも隠れているのだろう。
一番隠れやすそうな物陰に俺は息を殺し、ゆっくりと近づいて行った。