お前に全て、奪われた。 Ⅰ
物陰を良く目を凝らして見ると、黒いマントを被り身体を細かく震わせている人物がいるのがわかる。
男か女かは解らない。
俺は更に至近距離まで近付いて、黒いマントをゆっくりと捲る。
「………っ」
一瞬、
時が止まったのではないかと錯覚する。
ハッと、自分が息を呑むのが解った。
俺は、今迄色んな女に出会ってきた。
その中には絶世の美女だ。これ以上の上玉な女は居ないと、賞賛された女も居た。
でもそれらの女達よりも今、俺の目の前に居るまだ幼さが少し残る少女は美しい。
「お前、名前は…?」
勿論街で見かけた事など無い。
この少女が街で歩いていたら街中の男達が騒ぐに決まっている。