お前に全て、奪われた。 Ⅰ
私の視線を何か勘違いしたのか、
「…着替えさせて欲しいのか?」
と、真剣に言われて私はしどろもどろになりながら『遠慮しておきます!』と少し大きめな声で言った。
「あの、着替えたいので…部屋を」
お借りしたいのですが、と私が続きをいう前に部屋を静かに出て行ってしまった。
…早く着替えないと。
私は早速渡された服を広げて見た。
「…うわぁ…」
レース素材の白ワンピース。
し、白なんて…、絶対似合わないよ…。
今迄黒しか着たことが無い私にはレベルが高過ぎる…。
どうしよう、どうしよう。そう、クヨクヨ悩んでいるうちに大分時間が経ってしまった。
「…大丈夫か?」
あまりにも遅い私にドアの外からは心配そうな声が聞こえた。
どうせ、黒のマント上から羽織るし…問題無いよね。
無理矢理自分を納得させて、ガバッと勢いに任せてワンピースを着てしまった。