最愛〜最高の涙を君と…〜
「そんなんじゃないよ。ちょっとあんた、座って」
そう言って促されるまま
カウンターの一番隅に座らされた。
一ノ瀬颯はあたしを座らせると
店の奥に消えていった。
「………」
な、なんなの。
どういう状況なのこれ。
ひとりで悶々と考えていると
目の前にコーヒーが置かれた。
「はじめまして。この店の店長の水上大輝(ミズカミタイキ)です」
颯に怒っていた姿とは
打って変わって落ち着いた笑顔。
「あ、ありがとうございます。早瀬麗です」
「麗ちゃんね。俺の事は大輝君でも大輝っちでも好きに呼んで。あ、ミルクとかいる?」
「あ、いえ、大丈夫です」
へ、変な人……じゃなくて。
「あ、あの…」
「ん?あぁ颯?着替えに行っただけだしすぐ戻ってくるよ」
さっきまであんなに怒っていたのに
別人のように笑った大輝さんは
髭の似合うかっこいい大人の男だった。