メガネ王子


「優来、落ち着いて聞け。」

そう言ったお父さんは、泣きそうな、でも強い眼差しをしていた。


「お母さん、今日でだめかもしれない…」

…お父さんが言った意味が、すぐ分かってしまった。
本当は、理解したくなかった。
涙が止まらなかった。

「お母さんっ、やだ。まだお母さんといたいよっ…」

苦しそうに息をするお母さんにしがみつき、揺らす。
目を覚まして…、お母さんっ。


「やめなさい、優来。」

やだっ、絶対止めないもん!!
止めたら、お母さんはどこかへ行っちゃう―…。

揺らす手を止めないあたし。

「いい加減にしろ!!!!」


パァン


っ―――…

頬が痛い…。
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