メガネ王子


そう、思ってたんだけどな。あれからあたしは、医者を目指すのは変わらなかった。お母さんみたいな人を、助けたいって思った。


でも…。
お父さんが、変わったんだ。
今まで、家でお酒を飲むことはあまりなかった。だけど、家で酔っ払っていることが多くなり、あたしは不安を抱き始めた。

ある日あたしが言った一言であたしの人生は大きく変わった。

“「お父さん、お酒飲むのやめてよ!」”

この言葉が、お父さんの怒りを買ってしまったのだった。

“「あぁん?なんでおめぇにんな事言われなきゃいけねぇんだ。俺はお前を育ててる側だろ?不満があんならでてけよ!!」”

…あたしは混乱してた。

バキッ

―っつ…

殴られ、あたしの心の揺れは収まった。


“「でてく。」”

これはお父さんじゃないから。一緒にいたら殺されるかもしれない。

だから、あたしは必要なものを一瞬でまとめ、出て行った。


“「お世話になりました。お元気で」”

立ち尽くすお父さんに、ぺこりとお辞儀をしてお母さんとの思い出のお家。

今までありがとう。


*****
< 8 / 28 >

この作品をシェア

pagetop