星降る夜
兄貴について語るのは骨が折れるからまたの機会でいいか?
そうして、エトワール家の召使として雇われた俺は直ぐに物事を覚えた。……あの忌々しい兄貴に似て、俺は器用らしい。
ロワ様に取り入るのは容易だったし、子どもの頃教わった剣術の腕を買われてエポナ様の腹心になった。
・・・実際、すごく楽しかったのだろう。
民衆の怒声が聞こえない世界が。
毎日毎日母に怒られない世界が。
国民達に信頼され、尊敬される王族が……
……いつの日か俺は、本来の使命を忘れていた。
ずっと、このままこの国にいたいと、母国に戻りたくないと、そう思うようになった。
……しかし、兄貴や母はそれを許さなかった。