クロス×ラブ
二人は学校前の公園に来ていた。

ベンチに座る二人に言葉はない。

静かな沈黙がこの公園を包む中、それを破ったのは沢口だった。

「ねえ、山谷さん…」

「はっ、はい!、なにかな?…」

「今朝聞けなかったんだけど、どうして山谷さんは私になりたいと思ったの?」

小さくて、髪が綺麗で、眼鏡がとても似合っていて。

山谷は沢口にとって自分にないものだった。
だから沢口は、山谷が何を求めていたのか、分からない。

分かるはずなんてないのだ。

「私は…、私は、沢口さんの綺麗な顔とか高い身長とか、綺麗な脚とか、とにかく綺麗な沢口さんに憧れていて」

「私は、私はそんなんじゃない…、そんなんじゃない…」

沢口は分かっていた。
それでも、そんな綺麗って言葉は何の意味もないものだと

「私はただ、好きな人に好きだって言ってもらえたらそれで良かった…。」

「沢口さん…」

「私、昨日告白して振られたんだ…。あの人は、あの人は、私の持ってるものなんて何も求めてなかった。だったら私は何も持っていないのと変わらないじゃない!」
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