青空バスケ

「高瀬先輩、おはようございます」

「おはよ」

「………………」


あれからあの一年は俺に反抗的だ。

他の一年が挨拶するように促しても無視を貫く。


……まあ、あのとき何も答えなかった俺も悪いけど。


相当暁弥に憧れていたらしい。


なら、答えなくて尚更よかった。

本当のことを話して、ショックを受ける姿なんて見たくない。

それだったら、俺が悪者になるぐらい……どうってことない。


「石尾……お前、高瀬先輩にちゃんと挨拶しろよ」

「いくらお前が不貞腐れたって、辞めた先輩は帰ってこないんだからさ」


一年同士が集まって何か話しているのが聞こえた。

石尾は暁弥に憧れてる一年の名前だ。


「……気に食わないんだよ」

「何が?」

「あの人。
本当だったら中山さんが部長だったはずだぜ。
中山さんの方が強かったし」


……そうかもしれない。

暁弥が辞めたから俺が選ばれただけで、本当は暁弥が部長だったかもしれない。

それは薄々思ってた。

だけど、先輩は俺を選んでくれたわけだし、精一杯頑張ろうと思ってた。


……でも


「自分が部長やりたくて追い出したんじゃねぇの?」


……俺は石尾の中で相当な悪者になっていたらしい。

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