tearless【連載中】
『肉じゃが…』

「え?」

『肉じゃが食いたい』



私から離れた璃琥はいつもの場所に戻ると、体を深くソファーに沈めた。

黒のソファーにはっきり映る金色の髪。

根元部分は伸びたせいで少し黒くなっている。

遠くを見つめる瞳を何となく眺めていると“作れる?”ふと顔をこっちに向けた。



「…作れる」



母親が死んでから、少しずつだけど料理をするようになったから。

高校入ってからは、帰りも遅くなったりしてすっかり友里に頼りきりだったけど。



『…後で、買い物行くか』

「うん…」



返事をすると、璃琥はまた顔を正面にある窓へと向けた。



いつもここから見る璃琥の姿。

無表情だと、どこか冷たくて…。

少し伏せた瞳に長い睫。

“綺麗…”

いつもそんな事を思ってしまう。

大人びた顔つきはどこか色っぽくて、艶やかだ。

何もしていなくても絵になってしまう辺り、ムカつくけど。



『今日、泊まってけよ?』



ボーッと眺めていた私に、璃琥は視線を窓に預けたままでそんな事を口にした。


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