tearless【連載中】
「どーしたの?急に…」



今まで1度だってそんな事言わなかった。

どんなに遅くなっても、いつも家まで送ってくれてたのに…。



『嫌ならいいけど…』

「嫌…じゃないよ」



そう呟くと、何も言わずそれきり璃琥は黙り込んでしまった。

相変わらず視線は窓に預けたままで…――。

TVも何も付いていない静かな空間。

ただソファーに座る私達の吐く息だけが空気に溶け込んでいく。



時々思う。

この広い家に1人で居て、寂しくないのかなって。

2人で居たって有り余る程の空間。

こうして近くに居ても、何となく距離があって…。

たまに璃琥がすごく遠く感じる時がある。

真っ白の壁に、黒いソファー。

家具もカーテンも暗めの色で統一されたリビングは、落ち着いている様でどこか寂しい。



“親が揃えた家具なんだよね…きっと”



今は親の“お”の字も感じさせない程、まったく居たという気配は無い。

昔は家族で住んでたのかな?

いつから1人暮らししてるの?

聞きたい事が次から次へと浮かんでくる。

でも私はその言葉達をグッと飲み込み心の奧にしまい込んだ。


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