tearless【連載中】
「璃琥、バイトして生活してんでしょ?」



エレベーターに乗ってすぐ、私はポツリと呟いた。

相変わらず表情は変わらなかったけど、手がピクリと反応を見せたのを見逃さなかった。



『だったら?』

「私、自分の物は自分で買うから」

『何?心配してんの?』

「いけない?」



普通だったら、親が生活費だしてくれる。

高校生のするバイトなんて小遣い稼ぎでしょ?

好きなことしたり、好きな物買ったり…。

違う?

高校生が1人で生活していくって想像以上に大変だと思うよ?



『葵に心配されちゃおしまいだな…俺も』

「はっ、何それ?普通、心配するでしょ?」



好きな人の心配するのはいけない事?

少しでも楽にしてあげたい。

助けてあげたい。

そう思うのがいけないっていうの?



『嘘だよ…』



“…ありがとな”今にも消えそうな声で呟くと、ちょうど1階に着いたエレベーターは狭い空間をゆっくりと開放していった。



“璃琥がありがとう…?”



俺様で口悪くて一言多い璃琥が?

余りの衝撃にすっかりエレベーターを降りることを忘れていた私。

口をポカンと開け、ただ璃琥の背中を見つめていた。


< 125 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop