tearless【連載中】
『4階って事は璃琥先輩いんじゃん♪』

「だね…」



こんなに有名で騒がれてるのに今まで気付かなかった私は、本当に周りに関心が無いんだと改めて思い知らされた。



教科書を持つと、急いで階段を駆け上がり3年生の居る教室を横切る。

走る度にパサパサと揺れる髪を鬱陶しく思いながら、3つ目の教室を通り過ぎようとした時、ふと視界に入り込んだ金色の髪。



一番後ろの廊下側。



前を向いていたから顔は分からなかったけど、ドカッと座り背もたれに体を預けていた。

勘だけど、あれが新条 璃琥だと思った。



『セーフ』



前を走っていた結衣が化学室を覗き込み安堵の表情を見せる。

ハァ…、ハァ…、と走った為に荒くなった呼吸を整えると、窓際の長方形の6人掛けのテーブルへと足を進めた。



「疲れた…」

『…てか先輩居たね♪』



そう言って口角を上げる結衣に、私の勘は確信へと変わる。



『顔見えなくて残念』

「また見れるって」



“でも、先輩殆ど学校来ないからな”って嘆く結衣に“そんな感じする”と、思わず呟いていた私だった。


 
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