tearless【連載中】
『で?』

「嫌み言われた」



“笑顔でね…”ボソッと呟き溜息をつく私に、結衣は『また1人、敵が増えたって訳だ…』そう言って苦笑いする。



“敵”



私の一番の敵は、アイツに雁字搦めにされて抜け出せずにいる自分自身。

もっと心が強かったら…

もっと自分をしっかり持てたら…

逃げなくていいのに。



璃琥にも結衣にも雅貴先輩にも、心配掛けなくて済むのに…。



「…怖いんだ」

『何が?』

「瞳が…。真っ直ぐ私を見据えるあの冷たい瞳がすごく怖い…」



今でも、体が震える。

怯えてるの…。



『話って、その事…だよね?』



スカートをグッと握り締める私の手の上にそっと自分の手を重ねると『ちゃんと最後まで聞くから、ゆっくり話して…』結衣は、優しく諭すように言葉を口にした。



「一つだけお願いがあるんだけど…」

『なに?』

「話聞いても、同情とかなしだからね?」



“普段通り、変わらず接して欲しい”



結衣は優しいから、きっと心配して今まで以上に気を遣うだろう。

でも私には、いつも背中を押してくれる、前に踏み出す勇気をくれる結衣が必要だから。



『分かった…』

「約束だよ?」



“コクン”と頷く結衣を確認した私は、深く深く息を吸い込んだ。


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