tearless【連載中】
袋を見つめたまま呟けば、“そう…”色のない返事が返ってきた。

声だけでは意図が分からずゆっくり顔を上げると、目に入ってきたのは煙草を加え火をつける姿。

一瞬灯った明かりに浮かび上がる伏せた目元がやけに色っぽくて、不覚にもドキッとしてしまう。



『アイス、溶けるよ?』



その言葉にハッとすると、“おやすみなさい”軽く頭を下げ車を降りた。

クラクションを鳴らし走り去っていく車を見送ると、ふっと解き放たれた緊張感。

視線を足下に落とし、ふぅ。と軽く息を吐くと家へと戻った。



「なんか疲れた…」



柔らかくなってしまったアイスは食べる事を諦め、冷凍庫にしまう。


暗闇の中、自分の部屋に戻った私はそのままベッドに突っ伏した。

スプリングに跳ね上げられて揺れる身体もそのままに。

瞼に焼きつけられた祐樹の姿を思い出す。



“あんな色っぽい人、初めて見た…”



ギュッと枕に顔を埋めると、不思議な感覚に囚われながらいつしか眠りに就いていた。

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