tearless【連載中】
どの位こうしていたんだろう?

気が付くとオレンジ色だった教室が暗闇に包まれ月明かりがぼんやりと照らしていた。



「……、」



重い体をなんとか立ち上がらせると、鞄を持ちヨロヨロと教室を出た。

誰もいない長い廊下には私のピタピタという足音だけが不気味に響き渡る。



「泣けたらもう少し楽になれるのに……」



いつからだろう…?

私が泣かなくなったのは……。



帰り道、ふと空を見上げると満月が綺麗な黄色に輝いていた。

昔“月にはウサギがいてお餅つきしてる”なんて話を信じてたっけ…



「あの頃みたいに純粋で居られたら良かったな…」



高校に入って1年ちょっと。私はすっかり冷めた人間になっていた。


 
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