tearless【連載中】
頭を浮かせ手で支えた祐樹は、“お互い気持ちよければそれでいいんじゃない?”首筋に咲いた深紅を指先でツーっとなぞりキスを落とす。



つまり、気持ちよければ誰でもいい。

私じゃ無くても、セックス出来ればいい訳だ。



「そっか…」



そうだよね。自分に言い聞かせる様に呟くと、“おやすみ”祐樹に背を向け横になった。



“おやすみ”



髪に落とされるキスに目を閉じると、ツン、と痛む鼻の奥。



さっきここでしたセックスも、今のキスにも意味はない。



はっきりと突きつけられた現実に、1人空回りしている事に気が付いた。



私1人が勝手に舞い上がり、勝手に落ち込んで…。



祐樹との温度差を直(じか)に感じ、“泣くな。”そう思った時には、既に涙が零れた後だった。



少しでも淡い期待を抱いていた自分が惨めで、恥ずかしくて。

好きと言った訳でも無いし、自ら望んで体を重ねたというのに、泣くなんて本当笑える。


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