tearless【連載中】
確かに誘われるがまま体を重ねたけど、誰でも良かった訳じゃない。

祐樹だったから、祐樹が好きだったからなのに…。



『知ってる…』



“俺の事、好きなんだろ?”耳元でそっと囁いた祐樹は、私から離れると煙草を口に加えた。

時々強まるオレンジ色に浮き上がる顔は、怖いほど妖艶に染まっていて。



『恋愛なんて、所詮戯れ事に過ぎないんだよ』



“本気になるだけ、馬鹿を見るのは自分自身だろ…”

短くなった煙草を灰皿に押し付けると、再び私に近付いてきた祐樹は、“でも、バカな女は嫌いじゃないけどな?”ニヤリと笑い、唇を重ねた。



煙草の香りに包まれながら、されるが儘の私。


“好き”とか“嫌”とか、もうどうでも良くなった。

この男に、なにかを望もうとした私がバカだったんだ。

そして、それを見抜けなかった事。そんな男を好きになった私にも非はあるのだから。



「寂しい男…」



聞こえない様に呟くと、そっと瞑った瞼の端からは一筋の涙がシーツを濡らした。



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