tearless【連載中】
ードクン、ドクン……。
強く波打つ鼓動は、緊張からなのか、それとも走ったからなのか…。
見慣れた建物を前に、深く深く深呼吸をした。
ーピンポーン……。
数秒の沈黙後、“葵…”インターホンから聞こえる裕樹の声。
その声を聞いて、初めてここへ来た事を後悔した私。
“突然、ごめん…なさぃ…”
悪夢から開放されたくて自ら足を運んだのに、思い出される記憶から語尾が小さくなる…。
不安に駆られていると、間もなくオートロックが解除され自動ドアが開いた。
…何度となく通った場所。
初めて来たときは、すごくドキドキしたな…。
“ふぅ…”息を軽く吐くと、私はエントランスを抜けエレベーターで部屋に向かった。