tearless【連載中】
『おい、聞いてんのかよ?』



その冷たく言い放つ言葉に、一瞬息が出来なくなった。



“葵、聞いてんのかよ?”

“聞いてるってば…”

“なに?俺に口答えすんの?”

“違っ、普通に返事しただけだよ?”

“ふーん…”

“痛ッ、止め…”

“そーゆうの口答えっつーの。てか、ウザいから泣くな”



「ゆ…うき…」



気付いた時にはアイツの名前を呼んでいた。

もう二度と口に出さないと決めていた祐樹(ゆうき)と言う名前。

あの顔も、声も、名前も、とにかくすべてを忘れたくて、別れたあの日から私は“アイツ”と呼ぶ事にしてたのに……。



「な…んでそんなに似てんのよ…?」



あんた見てると祐樹みたいで忘れる所か思い出す一方じゃん…。

もう放っといてよ、お願いだから…。



唇を強く噛みしめると、ジワリと鉄の味が広がった。



『またそんな顔する…』



新条 璃琥の声にハッと顔を上げると、目の前には綺麗な顔があり、ビックリして後ろのガラス扉に思いっ切り後頭部を打ちつけた私。



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