tearless【連載中】
あの時はこんな風になるなんて思ってもみなかったな…。

…そう言えば下駄箱で私の事“葵”って呼んだよね?



「…名前呼んでんじゃん」

『何か言った?』

「別に…」



“あっそ”そう言うと、水溜まりも気にせずバシャバシャと歩いていく。



「璃琥…」

『何だよ?』

「これ返す」



羽織っていたブレザーを脱ぐと走って行き“ありがと”と前に出した。



『それで帰る訳?』

「え?」



私の胸元に視線を感じ顔を下ろす。



「嘘…」



とっさに手に持っていたブレザーで隠した私。

ブラウスは完全に濡れ、透けていたのだ。



『明日、持って来い。Cクラスだから』

「ちょっ…、待っ……」



私の話を聞かぬうちに“じゃあな”と璃琥は道を曲がり帰ってしまった。



「あ…の…」



取り残された私は恥ずかしさと戸惑いが入り混じりその場で呆然…。


 
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