tearless【連載中】
“トンッ”すぐ目の前に人が居て肩が軽くぶつかってしまった。



「あっ、すいません」

『…葵…?』

「……?」



その聞き慣れた声に顔を上げると、真那斗と腕を組むあの可愛い先輩が立っていた。



「ま…なと…?」



そう呟くと“誰?もしかして元カノ?”と首を傾げる彼女。

人形のようなパッチリ二重の瞳が印象的な、予想通りの可愛い人だった。



『お前何で此処に居んの?』

「えっ…」



冷たい言い方に“ズキン”と胸が痛む。

ついこないだまで彼女だったとは思えない程の距離感…。



“所詮、他人なんだよね…私達”




息を吸い込み言い返そうと、声が喉まで出かかった時“俺んトコ来たんだけど悪りぃ?”と、私の頭の上に手と頭を乗せながら刺のある言い方をする璃琥。

見えないけどきっとあの瞳で2人を見ている。

だって、真那斗と彼女の顔が強ばってるもん…。



「てか、重い…」

『ちょうどいいトコに頭があんのが悪い』



はぁ!?私が悪い訳?

本当この男どーにかして……。



『真那斗、じゃあまた帰り…』

「じゃあな」


私達の会話を気にする事無く、笑顔で手を振りこの教室に入る彼女を、真那斗が愛おしそうに見送る。



“ズキン…、ズキン…”



また胸が痛み出し、思わず目を背けた。


 
< 46 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop