tearless【連載中】
「…ごめん…」

『お前も一応謝れんだな』

「……、」



笑顔が余りに綺麗過ぎて、謝った事も璃琥が返してきた言葉も覚えていない。

ただ笑う璃琥に瞳を奪われていた…。



『葵が言い返さねえなんて気持ち悪りぃな。もしかして昨日の…』



何か遠くで声が聞こえると、手が後頭部に触れ“大丈夫だよな…”って難しい顔をしている。

近付くとする微かな香水と煙草の匂い。



“ドクン...ドクン...”



何か…私、変…。

胸元のブラウスを左手でギュッと握りしめ“ごめん…私…”そう呟き2、3歩後退すると璃琥に背を向け走った。



『葵…?』



呼ばれている事にも気付かずただ走った。



“嘘…”



あんな奴にドキドキするなんて有り得ない。

口を開けば暴言ばっかで自己中だし…。



「何で、ドキドキがおさまんないのよッ!!!」



あの笑顔のせい?

チラつく璃琥の笑顔にギュッと目を瞑ると足を少しずつ遅めた。



「…どうかしてる…」



乱れる呼吸を整えていると、チャイムが鳴り5時間目の開始を告げる。

何も考えずに走った為、私は下駄箱の所まで下りてきていた。



 
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