tearless【連載中】
授業が始まった為、静まり返った校舎内には私の歩く“ピタピタ”という足音だけがやけに大きく響く。

下駄箱の前に立ち、昨日の事を思い出すと自然と溜息が漏れ“あんな奴…”と無理やり気持ちに蓋をしてる自分が居た。

まだ逢ったばかりで良く知らない璃琥に、何でこんなにドキドキしてしまうのか正直分からない。

分からない…と言うよりは分かりたくないという方が正しいのかも知れない。



「ただ綺麗な顔してるだけ…」



性格は最悪なんだから!!



“それなのに…”



私が璃琥に惹かれるなんて、絶対絶対有り得ない。



足を昨日2人で座った位置まで運び、ふと煙草の吸い殻を捨てたであろう場所に目をやる。

けど、そこには何も無くてただグレーのコンクリートだけが広がっていた。

まるで昨日2人で居た事なんか無かったかの様に綺麗に掃除されていて、夢でも見ていたんじゃないかとさえ思ってしまう。



「本当に全て夢だったら良かったのに…」



陽の射さない薄暗い下駄箱に、私の溜息だけが静かに木霊した。


 
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