tearless【連載中】
「来てくれたんだ…、結衣…」

『鞄預かった』



そう言って腰に回された方とは反対の手から私と璃琥の鞄を2つを持ち上げ“歩けんのか?”とまた心配そうな顔をする。

今日の璃琥、なんか変…。



「…なんとか…」



まだフラフラするけど、このままこうしてる訳にもいかない。

璃琥に支えられながら下駄箱まで来ると、靴に履き替えた私。



『ここで待ってろ』



そう言い残してから1分後、シルバーの自転車に跨った璃琥が現れた。

カゴには2つの鞄が窮屈そうに押し込められ、肩紐がダランと垂れている。



『後ろ乗れ』

「えっ…でも…」

『早くしろ』



“送るから”そう言う璃琥に戸惑いながらも、好意に甘える事にした。



熱のせいで荒くなる呼吸を整えながら荷台に跨ると“掴まってろ”と、また命令口調。

でも、嬉しかった。

言葉は悪いけど、心配して送ってくれようとする璃琥がすごく優しく思えたから…――。



遠慮がちに腰に手を回すと“家どこ?”と顔を私に向ける。



「左に真っ直ぐ」

『ん…』



足をペダルに掛けると、ゆっくりとこぎ始める璃琥。


 
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