tearless【連載中】
『ねっ?』

「…はぁ……」



溜息をつくと、一気に心に影が堕ちていく。



『璃琥先輩の事狙ってる女子は星の数ほどいるわけだし?』



“彼女となったら、ねぇ…?”そう言って肩をポンと叩く。



「…だから彼女じゃないって」

『私は応援するから!!いつでも私は葵の味方だよ?』



そう言って一方的に手をギュッと握ってきた。



「…話聞いてる?」

『聞いてる。ってかさ―、保健室行った日、璃琥先輩ずっと傍にいたんだよ?』



その言葉にあの日の事が頭に浮かび、途端鼓動が反応を示す。



『それを目の前で見せつけられたら、そう思うって!!』



肘を机に置き、手の平に顔を乗せながら“好きじゃなきゃ出来ないと思うな~”と呟く結衣に私の視線が泳いだ。



『本当、2人共素直じゃないよね…』

「2人共?」

『まあ璃琥先輩はともかく、葵は嘘吐いても無駄だからね?』



見透かした様に見つめる瞳に“…あり得ないから”と作り笑いをするけど、心臓はバクバクしている。



『…はいはい』



呆れた様に言葉を吐き出すと“良いと思うよ”ってポツリと呟き、グロスのついた口が弧を描いた。


 
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