tearless【連載中】
「…他人事だと思って…」



付き合ってるって疑われただけでこんな視線を向けられるのに、もし実際付き合ったとしたらどんな目に遭うのだろうか?

考えただけでゾッとする。



「本当に、助けてもらっただけだから」



そう、助けてもらっただけの事。

それ以外の何者でもない。



『璃琥先輩は違うかも知れないよ?』

「そんな訳…無い…じゃん」



結衣は何を知ってるの?

何でそんな自信あり気な訳?

私が璃琥を好きになった事も気付いてるの…?



もしかしたら私は、とんでもない人を好きになってしまったのかも知れない。



『私の勘って当たるから』



今ならまだ引き返せる。



「勘は勘でしょ?」



私達の会話をみんなが耳を澄ませ聴いているのが分かるの。



『璃琥先輩に好かれるなんてめったに無いよ?』



ドクン...ドクン...



“怖い…――”



冷たい視線が私にグサグサとささり、まるで悪い事をしたかの様。



「好かれてなんか無い」



アイツと同じ瞳で私を見ないで…。



『まぁ葵がどう思ってるか知らないけど、お似合いだと思うな、私は』



もうこれ以上何も言わないで…。

ますます冷ややかな視線が送られる。



“ただの噂だけなのに、なんでこんな目に遇わなきゃなんないの?”



「ごめん…。気分悪い…」



鞄を持つと勢いよくイスから立ち上がり、視線から逃げる様に教室を飛び出した。


 
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