tearless【連載中】
チッ、と舌打ちすると“行くぞ”そう言葉を吐き捨てドアに向かって歩いて行ってしまった。



「あ、うん…」



机に手をつくとイスから立ち上がり、重苦しい空気を全身で感じながら急いで璃琥の後を追う。

相変わらずポケットに手を突っ込み、気だるく歩く姿は初めて逢った日から変わらないまま…。



「璃琥…」



先に行くのは、いつもの事。



『先、行ってる』



いつもこの言葉を残し、あっという間に姿が見えなくなる。

少し寂しいけど、私がそうさせちゃってるのかな?と思うと何も言えない。

でも、いつまでもこうしてる訳には行かないよね?

いい加減、視線にも慣れなきゃって思うのに、心が拒絶する。

“はぁ…”溜息をつくと、薄汚れて所々剥がれているタイル貼りの見慣れた階段を上り、3年生のフロアに足を踏み入れた。

未だに慣れない空間に足早に屋上へ続く階段に足を掛け、ちょうど3段目に差し掛かった時。

不意に“葵ちゃん”と名前を呼ばれた私は、足を止めて声のした方へ振り返った。


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