誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「わたしのことは、もう気にして頂かなくて結構です」
そう言い捨て、部屋を出ていこうとする彩の腕をつかみ、敬は彩を壁に押しつけた。
「や…っ、離してっ」
「嫌だ。離さない。彩がちゃんと話を聞いてくれるまでは」
筋肉質の逞しい腕で押さえつけられ、彩は身動きもできない。
「あの日、彩を送り届けた帰り、センター長から連絡があった。
俺達のこと、リークしようとしてる人物がいると…」
「中島さん…ね…」
「ああ。証拠も何もないけど、女の勘ってやつかな。
自分をないがしろにし俺が目障りだったんだろ。研修中に社員がパート女性に手をつけたなんて噂が立ったら会社も面倒でしょうねと、自分のことは棚に上げて、お得意の脅しだよ。
いや、俺は周りに何て言われてもいい。はじめからヤツの脅しに屈するつもりなんてない。真剣な気持があるのなら、何も恥ずべきことではないとセンター長もわかってくれてる。
ただ…」
「ただ…?」
「ただ、前の会社でも噂を立てられて、居づらくなってしまった彩に……
二度と、同じような辛い思いをさせたくなかったから…」