誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~


「もう、男に裏切られて傷つくのはコリゴリ。

あたしは極力目立たず、周囲の人と波風立てず、ここで小さな幸せ噛みしめて生きていこうと決めたのよ」



「ブッ!」



理香は思わずお茶を吹き出した。



「あんたいったい何歳なのよ。こんなとこで、いつまでも使い捨てのパートにしがみついてるつもり?」



「ほっといて。

婚約者に逃げられて、知らない人にまで後ろ指さされて、あたしが前の会社でどんな惨めな思いしたか…

こんな片田舎で、パラララパラララ好き放題バイク乗り回してた理香達にはわかんないわよ」



「はぁーっ?!」



ダチまでバカにされ、ついに理香はキレた。



「いつまでもいつまでもグジグジと昔のこと引き摺ってんじゃねぇよ!」



社食中に元レディース総長の啖呵が響き渡る。



「あんた何かあると、婚約解消された、男なんて信じらんないって被害者ぶるけどさ…ここんとこ手ぇ当てて、よーく考えてみなよ」



理香は拳を作って胸をドンドン叩いた。



「ほんとにそいつのこと愛してたのかって、心底惚れてたのかって。そいつと結婚して、ほんとに幸せになれるって思ってたのかって?」




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