誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
スーツケース一つ抱え、彩は空港に降り立った。
息もできないくらいのムア~ッとした熱気の洗礼を受け、とうとう南の果てまできたんだと汗ばんだ肌が実感する。
車窓から広がるのは、いつかテレビのコマーシャルで見たまんまの海の色。
エメラルドグリーンとマリンブルーが混ざり合い、次第に深くなって水平線の彼方に落ちていく。
光を浴びてキラキラ輝く水面は、まるでダイヤモンドパウダーをちりばめたよう。
「うぁ~っ、きれ~ぃ」
裸足になって駆け出していきたくなるようなトロピカルな風景に心は浮立ち、ついコマーシャルソングなど口ずさんでしまう。