誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「バカンスですか?」
タクシーの運転手に尋ねられ、いや、そんな場合じゃないんだと、顔をキリリと引き締めてみる。
「いえ…仕事です」
が、それも五分と持たない。
沖縄の太陽は、風は、海は…こんな切羽詰まった人間の気持まで緩めてしまうものなのか。
―あちらの方は、何と言いますか、穏やかというか、非常にのんびりした方が多くて…準備が大幅に遅れておりまして…
「フフッ…」
センター長の言葉もまんざら嘘ではないんだなと、妙に納得してしまう。