誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~


「失礼します」



中に居たのは、スーツ姿の男性二人。



手前の一人は、まさしく現地のセンター長らしき、濃ゆい顔の小柄なオジサン。



そして、その隣には…しれっと仕事モードな敬が、彩には見向きもしないで手元の書類を整理している。



喧嘩上等――



理香の言葉を反芻し、思わず逃げ出したくなる気持を奮い立たせる。



「よろしくお願いします」




履歴書の入った封筒をセンター長に渡し、用意された席につく。



ふと顔を上げた敬は「あっ」と声を上げ、思わず立ち上がった。



「どうかしました?」



センター長が訝し気に敬を見上げる。



「あ…いえ…、すいません」




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