誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「はっ?喧嘩?…いえ、いいです。あなたは、その人を……愛しているんですか?」
敬が潤んだ瞳を彩に投げかける。
「…はい。愛しています。わたし、心も、身体も、もうその人じゃなきゃダメなんです」
彩が凜とした表情で答えると、センター長がポッと頬を赤らめる。
「ほっ…これはまた大胆な…」
言うべきことをすべて言い切ってしまうと、彩は目をつぶった。
最期の審判を仰ぐために…
神様…お願い……
しばしの沈黙の後、敬はあくまでもビジネスライクに、こう告げた。
「……では、早速、明日から出社して下さい」
えっ?
「いいですね。センター長?」
「あっ…は、はい。そりゃ、もう、わたしの方は何も言うことは…」
「ありがとうございます」
彩は一礼すると、ガラス窓越しに心配そうに見守っている二人の応援団に、親指と人差し指でリングを作って見せる。
共に喜びを分かち合おうと、ドアノブに手をかけたとき…