誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
出会いは五年前――
彩が四回生の時、新入生としてテニスサークルに入部してきたのが、まだふっくらとした頬にあどけなさが残る桐谷 敬だった。
初めてテニスコートでボールを追う敬を見たとき、「わっ、かっこいい!」と、思わず見とれてしまったことは鮮明に覚えている。
スラリと長身の彼がラケットを抱えてキャンパスを歩くだけで、周りの女の子が皆振り返ったと、後輩達がよく噂していたものだ。
が、当時の彩は三つも年下に手を出すほど男に不自由してなかった。
結婚を考えてくれている年上のカレもいた。
「……なのに、どうして?」
食後のコーヒーをスプーンでかき回しながら理香が聞く。
「うん…」