誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「ふ~ん。それから?」
「それから…いや、それ以上はここでは言えない」
理香が身を乗り出す。
「よかったの?」
彩が赤面してコクリと頷くと、理香は腰が抜けたようにイスの背もたれに崩れ落ちた。
「よかったんだ~。
…で?で?それからどうなったの?」
「それだけっ」
「はぁ~~?何それ?意味わかんないし。
よかったのに、何でそれだけなの?」
「急に怖くなって、逃げちゃったの。あたし、この人に溺れちゃうんじゃないかって…」
「あ~ん、溺れた~い。あたしもあの身体に溺れた~い」
周囲の視線を気にして、彩は声をひそめた。
「いい?こんなことバレたら、あたし、パートのオバサン全員を敵に回すことになるんだからね。
敬があたしに気づかないで出てってくれるまで、理香も協力してよね」
「え~、つまんな~い。せっかく面白くなりそうだったのに~」
理香の気持はわかるが、ここは譲るわけにはいかない。