誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~


「彩ちゃん、大丈夫?」



日村さんが見かねて声をかけてくれる。



「大丈夫です。今日は引きが悪いだけで、大したことないですから」



「そう?せっかく花粉症が治ったっていうのに…最近ついてないねぇ」



「はぁ…」



花粉症という響きに、敬の唇の感触が蘇る。





「俺がその花粉症、治してあげますよ…」



それは、桜の花びらが舞い落ちるような、甘く、優しく、せつない…大人のフレンチキス…





いやいやいやいや…



彩は頭を振って雑念を追い払った。



ふと気づくと、デスクの上に『確認したい事項があります。お電話が終わりましたら社員斉藤まで』とのメモクリップが置いてある。



うわっ!サイトー注意伝っ?!




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