誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
オペレーターの態度が悪いとか、間違った商品が届いたとか…
名指しでクレームが上がってくると、勤続三十年、泣く子も黙る指導係の斉藤さんから呼び出しがかかるのだ。
理香語で言う『ちょっと体育館の裏まで顔貸しな…ボコボコにするから伝』である。
「行ってきまぁす…」
インカムを外し、ボコボコにされる覚悟で席を立つ彩を、日村さんが励ましてくれる。
「大丈夫大丈夫。彩ちゃんのことだから、きっと、ただの確認だけだよ」
いや、そうじゃない。
敬がきてからというもの、知らず知らずの内に、どこか心ここにあらずの応対になっていたのかもしれない。
何か大きな失敗をしでかしてしまっているのかもしれない。