誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
弁当箱をゆすぎ、水切りに上げ、布巾でシンク周りを拭く。
長い脚を組み、その一連の作業を背後から見つめていた敬は、
「いいなぁ…」
と、ポロリとこぼす。
「えっ?」
「女の人がキッチンに立つ後ろ姿って…そそられる」
キ、キターっ。
一気に逸る鼓動を悟られまいと、他人事のように軽くジャブを返す。
「そんなこと言ってたら、そのうちセクハラで訴えられますよ」
「それは困ります。何とか理性と闘って……
はぁっ」
いつの間にか、振り返ることもできないくらい接近していた敬が、せつな気に吐息を漏らす。
と、次の瞬間――
彩は大きな腕の中にすっぽりと閉じ込められた。