誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~


必死で敬から身を剥がそうとするが、彩の力ではどうにもならない。



危うく敬の白いシャツに口紅をつけてしまいそうになり、慌てて顔を背けると、今度は敬の吐息が耳にかかる。



うっ…マジヤバいっ。



ゾクリと肌が粟立つような快感を逃がそうと、大きく息を吸い込んだ次の瞬間、敬の腕に腰をぐいと引き寄せられた。



えっ…



胸がキューンとせつない音を立てる。



ダ、ダメだって…こ、こんな公衆の面前で…もぉっ、敬のバカっ…



かろうじて残っている理性で、非難めいたまなざしを敬に向ける。



けれど、敬の目線は彩を通り越し、彩の背後からギュウギュウと下半身を押しつけていた中年のオヤジを、威嚇するようにガン見していて…



そ、そういう、こと…



ヤダ~~っ!



敬はあたしを痴漢から守ってくれてただけなのに…



勘違いだっつーのっ!



抱き寄せられたと勝手に思い込み、敬を睨みつけてしまった自分がチョー恥ずい。



ダメダメダメ…この勘違い、死んでも敬に気づかれちゃダメっ!!




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