誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
その日のランチタイム――
早速噂を聞きつけ、理香が飛んできた。
「彩~、今日は桐谷と同伴出勤の上に病院送りだって~?
あたしにはちょっかいかけるなって言っといてさぁ、随分ド派手にやらかしてくれてんじゃん」
「えっ、誰から聞いたの?」
「もう会社中で噂になってるよ。あたしの隣のバツイチ中島なんて、あの二人何かあったのって、マジ顔で探り入れてきたしっ」
「ヘボ運転士の急ブレーキのお陰で誰かの足踏んづけちゃって、それがたまたま近くに居合わせた敬だったって…ただそれだけの話よ」
今朝のパニクりぶりをひた隠し、さも何でもなかったようにうそぶいて見せる。