誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「皆さん、毎日ご苦労様です」
ここにはめったに顔を出さない副社長が、でっぷりとした腹を突き出し、油ぎった顔に薄気味悪い笑みを浮かべて言った。
「今日は皆さんに、嬉しいお知らせがあります」
社内が一気にざわつく。
「センター長、桐谷くんを」
センター長に促され、会議室から一人の青年が姿を現すと、キャーッとあちこちで歓声とも悲鳴ともとれる声が漏れた。
「え~、彼は入社三年目にして、はや幹部候補生と期待される若手のホープでして…
ここでの研修は三ヶ月の予定ですが、その間、現場の声をいろいろ聞かせてやって下さい」
「桐谷敬(キリタニ ケイ)です。よろしくお願いします」