誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
二人を見送った後、四人分の支払いを済ませた敬は、彩をエスコートして駐車場へ。
「さてと…行きますか」
シルバーのEV車が静かに滑り出す。
夜の街に煌めくイルミネーション、FMから流れるスタンダードジャズ、初めて見る敬のしなやかなハンドルさばき…
すべてが心地よく、彩を夢見心地に誘う。
敬が運転のために前を向いてるのをいいことに、彩は敬の横顔を心ゆくまで堪能した。
形のよい額にかかる柔らかそうな髪。スーッと通った高い鼻。薄く引き締まった唇。切れ上がったシャープな顎のライン。
完璧……
「そんなにじっと見ないで下さい。緊張しますから」
「いいじゃないっすか~。別に減るもんじゃなし~」
「えっ、彩さん?酔っ払ってるんですか?オヤジ入ってますけど」
「エヘ、エヘへヘッ…」
「何がおかしいんです」
「だってぇ、いっつもあたしのこと…からかってばっかなのに~今日は、やられっ放しで…ウフッ、フフフッ…
ぁあ~~~!そうだ、忘れてたっ!
今日は敬に、はっきり言っておこうと思ってたことがあったんだぁ」