誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「…それで?」
「平謝りして、逃げ帰ってきた」
「それだけ?」
「それだけ」
「ご褒美は?」
「なしっ」
「ええ~~っ?!
エレベーターでキスして、給湯室でバックから襲う男が?部屋に連れ込んで?一晩自分のベッドに寝かせて?何もなしっ?
…ねぇ、桐谷って、アブノーマルじゃないと燃えないタイプ?」
「なこと知らないわよ」
五月の木漏れ日の美しいイタリアンカフェのテラス席で、彩はブータレ顔でラザニアをパクつく。
「そっちこそどうなのよ。援護射撃を想定して…な~んて、あたしにさんざん説教したくせにさ、タイプの男が現れたらテンション上がりまくっちゃって全然ブレーキ効かないし」
理香は急に甘ったるい声を出す。
「だってぇ~、和也とは~、運命の出会い系だしぃ~」
だから、出会い系じゃねぇし。
ってか、呼び方変わってるし…
「理香?」
「やったよ」
即答かよっ。
「初めて会った日に?節操なくない?」