誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「失礼します」
恐る恐る、第三会議室に足を踏み入れると、斉藤女史の隣には相変わらず、しれっと仕事モードな桐谷敬、そして何故かバツイチ中島。
ただでさえ、憂鬱なサイトー注意伝なのに…何?この、胃が痛くなりそうな組み合わせ。
「お疲れ様です。今日集まって頂いたお二人には、来週から本社へリーダー研修に行って頂くことになりました」
「へっ…」
予想外の展開に思わず声が裏返る。
「この一年間、皆さんのお仕事ぶりを拝見して、検討させて頂いた結果です。中島さん、若松さん、よろしくお願いしますね」
「ありがとうございます」
食い気味に快諾した中島に比べ、彩にとっては降って沸いたような災難としか思えない。
「それは、もう…決定なのでしょうか?」
「ええ。そうです」
斉藤さんのきっぱりと明るい声が無情に響く。