誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
本社研修にて
研修二日目――
はぁ~~。
本社ビルの最上階にある研修室の窓から都心のビル群を見下ろし、彩はどっぷりと大きなため息をつく。
斉藤さんは、「若松さんなら大丈夫よ~」なんて軽く送り出してくれたけど、本社でのリーダー研修は初日から地獄の特訓だった。
レクチャーされたリーダーとしての責任の重さ、渡されたマニュアルの分厚さ、教官の鬼瓦顔…もさることながら、彩を一番疲れさせたのは、何かにつけて敵対心剥き出しにしてくるバツイチコブツキ三十路女、中島の存在。
ホテルに帰ってからも同室で、疲れはさらに倍増。
彩には挨拶もせず、目も合わせようとしないくせに、敬の姿を見つけるや一変。とても白昼のオフィスとは思えないほどの猫撫で声でにじり寄る。
けっ、妖怪色気ババァが。